今,情報教育はどうなっているのか

夏の集中講義で,おもに学部二年生対象のコンピュータリテラシ的な科目を担当した.

色々と考えるところがあったのだけれども,特に印象的だったのが,「情報教育」というものについての学生さんの考え方.

パワーポイントの演習ということで,情報教育の必要性に関するスライドを作って発表してもらったのだけれど,ほとんどの発表が情報化社会の負の側面(オンラインでの犯罪だとかデジタルディバイドだとか)を前提にして,情報教育というのはそれに対する対応策として大事だよ,という論調であったのだ.

僕自身は情報科学というものが,世界を輝かせてくれるものと思っているので,ちょっとショックで悲しかった.


ちょうど初等教育段階から情報教育を受けてきた最初の世代に属するらしいのだが,いったいどうしてそういうイメージを持つにいたったかというところを考えてみると,教える先生方がソフトウェアの使い方を教えた上で,それ以外のものを何か加えようとすると,そういう部分が多くなってくるのかなあとも思う.

ネットでのプライバシーやら著作権侵害やらが世間の関心ごとで,学校にはその抑止が期待されているということで,仕方ないかもしれないが,これでは情報科学をおもしろそうだと思って専攻してくれる学生が増えそうな気がしない.

資料づくりで参照するウェブ上の情報教育に関する資料も,おそらくそんな感じの「情報=怖い」だからちゃんと予防していい子でいましょうね,というトーンで埋め尽くされているのだろう.


個人的には通信関連も含めた情報技術の進歩が世界や生活にものすごく良い影響を与えていることを信じて疑わないし,それ以上にアルゴリズムやらモデリングやらの情報科学的な思考様式が,単に比ゆ的な意味であったとしても,われわれの知性の向上に役立つだつと考えているものの,それをうまく伝えることはまた難しい.

ソフトウェアの使い方を教えるだけの授業であっても,ITによって自己が拡張していくような気分を伝えることはできそうな気もするけれど,小学生や中学生が,いわゆる生産性ツールの威力を感じる機会はあまりないかな.むしろメールやウェブの方がわかりやすいのかもしれない.

せめて大学では建前上やらざるを得なくてやっている道徳教育ではなくて,未来を開拓するための手段としての情報科学というものを展開したいものだが,どうやったらそうなるかはまったくわからない.


#ちなみに先日紹介したWebラーニングプラザと「ヒカリ&つばさの情報セキュリティ3択教室」は,適当な部分をつまみ食い的に使ってみました.