地方大学での研究今昔 【「神の手」実は劣等生】の感想

日経新聞夕刊の連載「人間発見」に,理化学研究所チームリーダー若山照彦さんが登場.クローン技術で有名で,世界で初めてマウスのクローンを作成したのだとか.

記事の内容は,英語ができなくて苦労しているが,熟練の手技でやっていってます,という話.
これに関するブログポストが一件だけ見つかった.


英語の話やら手先の技だけで生きていく話やらも面白いのだが,一番印象に残ったのは,第二回の学生時代の以下のようなエピソード.

入試に英語が無いことから茨城大学農学部に進学した.専門課程に進んでみると,最先端の研究をする環境にはほど遠かった.
専門課程に進むとき,農水省系の研究所からバリバリの研究者が来たという話を聞き,その人のいる研究室を志望しました.ところが現実は期待とは大違い.設備が貧弱で研究に取り組む環境にはありませんでした.「周りの研究者とおれは違う」と意気込んではみたものの,研究費は少なく,実験に使うマウスの餌代にも事欠きました.

その結果

与えられたテーマは・・・,科学的には意味のない実験でした.大学院に進むと,指導教官と大げんかし,研究室にいられない雰囲気になってしまいました.

となる.

振り返ると,茨城大でやった受精卵の移植も実験技術を身につける点でよい経験になっています.

という一文で少し救いがあるのだが,基本的に悪い環境(=地方大学)でどんなに頑張っても意味が無いよ,という現実を正直に表明してらっしゃるなぁと思った.
研究に対して意欲的な学生に対しては「ここで頑張れ」というより,「良い環境を探せ」というのが誠実というものだ.